原画情報: |
141×110㎝ 1885~1886年 |
作者紹介: |
ワッツは1817年にロンドンのマリルボーンで生まれた。 貧しいピアノ職人の息子で、生来病弱であったため正規の教育を受けることはなかったが、繊細な子供だった。 非常に早い時期からその才能を示し、10歳から、ウィリアム・ベーネス(William Behnes)に彫刻を習いだし、18歳でロイヤル・アカデミー・オブ・アーツに入学した。 1843年にウエストミンスターホールの壁画コンクールで金賞を得、そして1847年までイタリアを旅行し、古代彫刻やティツアーノやミケランジェロらルネッサンスの芸術を研究した。
帰国後、同時代の社会問題を扱った作品を描くが、やがて寓意的な作品を多数制作した。 一方で、当時の著名人、文人、芸術家を描いた肖像画も数多く残している。
1864年に17歳の誕生日の7日前の女優のエレン・テリーと結婚したが、エレンはで、年の差は30歳近くあった。 しかし、結婚から1年も経たないうちに、エレンは別の男と駆け落ちした。 1886年にワッツはスコットランドのデザイナーで陶芸家のメアリー・フレイザー=タイトラーと再婚したが、69歳のワッツに対してメアリーは36歳で、この時も年の差は開いていた。
1867年にロイヤル・アカデミーの会員となるが、この頃より彫刻作品にも関心を示し、多くの作品を手掛けている。
ワッツは観念的な主題を数多く描いたが、同時代のラファエロ前派とはほぼ無関係で、様式的にもラファエロ前派の細密描写と異なり、輪郭線をぼかすことにより、幻想的イメージを作り出している。
1891年、サリー州ギルドフォードの南にあるコンプトン近郊の「Limnerslease」という家に引っ越し、1904年に没する。
|
作品紹介: |
アメリカ大統領オバマを強く影響したこの作品はは、とても神秘的な作品である。
地球を思わせる球体の上で、目隠しをした女が、一本しか弦のない竪琴を抱き、その音に一心に耳をかたむけている。
極めて象徴的な作品と言えよう。
当時、この絵は、「希望」というよりは「絶望」という題の方がふさわしいと言われたそうだ。
絶望のなかでの ぎりぎりの希望
地球を思わせる薄茶色の球体の上に、目隠しをした女性。
竪琴を大切そうに抱え、最後の一本の弦をつまびく。
彼女の魂は、一本の弦が奏でる微かな音色に集中する。
全体に薄暗い淡い色調は、あきらめに似た絶望。
けれど、一本の弦がある、それは、絶望のなかでの彼女のたったひとつの、ぎりぎりの、希望。
ひとは、そのシチュエイションは戦争であったり、人生そのものであったり、そして恋愛であったりするけれど、この絵のような「希望」をきっと経験している。
|
|